現在マーケティングを担当していらっしゃるのであれば、魅力的なUSPを作成して、貴社商品やサービスの良さを、効率よく顧客に伝えていきましょう!
しかしUSPを作った経験がない方の場合、どのように作り始めたらいいのか、そもそもUSPとはどのようなものなのか、わからないことも多いでしょう。そこで今回は、USPの基本情報をはじめ、魅力的なUSPを作る方法や著名企業のUSPをご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただければ、どなたでも魅力的なUSPを作成できるようになりますので、ぜひ参考にしてください。
USPとは?
USPとは「Unique Selling Proposition」の頭文字を取ったマーケティング用語で、顧客に対して自社だけが提供できる利益やメリットを文章化したものです。
ここではUSPの意味について、もう少し詳しく解説します。
USPは、自社独自の売りを明文化したもの
USPとは冒頭でも解説したとおり、自社独自の売りポイントをわかりやすく文章化したものです。
有名なUSPとして、稲葉製作所の「やっぱりイナバ 100人乗っても大丈夫!」が挙げられます。このUSPは、耐荷重〇kgと書かれている一般的な倉庫よりも、丈夫さを具体的に伝えています。そのため、丈夫な倉庫を必要としている人からすると、一般的な倉庫よりも売りポイントが明確に記されているイナバ物置のほうが、魅力的に感じられるのです。
このようにUSPは、市場にあふれる類似サービスの中から、貴社の商品やサービスを選んでもらうためのきっかけとして非常に役立ちます。
コンセプトやキャッチコピーとの違い
USPは、コンセプトやキャッチコピーと混同しやすい用語です。USPは顧客目線に立って自社の独自性をアピールする言葉なのに対し、コンセプトとキャッチコピーは自社目線に立って、サービス内容や特徴を顧客に伝えているという違いがあります。それぞれの違いについて、以下の表にまとめました。
【USP・コンセプト・キャッチコピーの違い】
USP | コンセプト | キャッチコピー | |
---|---|---|---|
目線 | 顧客 | 自社 | 自社 |
概要 |
自社独自の売りポイントやメリットを 顧客目線でわかりやすく文章化したもの |
自社サービスの方向性や ブランディングを表した言葉 |
自社の特徴を キャッチーで目を引く言葉で表した言葉 |
例文 | 吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機 ※1 | やさしいをつくる、強い人 ※2 | お口の恋人 ※3 |
※1 引用:dyson
※2 引用:ユニチャーム
※3 引用:株式会社ロッテ
マーケティングにおけるUSPの重要性
マーケティングを行う際にUSPを設定しておくと、セールス活動をしなくても顧客に貴社サービスの売りポイントが自動的に伝わりますし、どのサービスなのかパッと思い出してもらえます。
例えば、「お、ねだん以上」と聞くとニトリ、「結果にコミットする」と聞くとライザップが思い浮かぶでしょう。ここまで浸透すれば、たった数文字のUSPが何百万、何千万とかかる宣伝費用をカバーする大きな役割を果たします。
また、USPを作ると貴社独自の特徴を効率よく顧客にアピールできるため、競合に打ち勝つことも可能です。
このように、USPはセールスに割いている時間や費用を削減できるだけでなく、認知度をアップさせて競合の多いサービスの中でも貴社サービスを埋もれにくくさせる、重要な文章です。
USPの基準
USPは、以下3つの基準を満たしたものでなければいけません。
ここからは、それぞれの基準について解説します。
①広告が顧客への提案となっていること
USPは広告文が自社のアピールではなく、顧客に対して「自社だからこそできる強み」を提案した文章になっていることが重要です。そのため、USPを作る際は顧客目線に立ち、サービスを利用することで顧客側が得られる価値を提案できるようにしましょう。
②競合と差別化された、独自性のある提案であること
USPを作る際は、競合にない自社のサービスをアピールできる文章で、顧客に独自性を提案することも大切です。USPは自社と差別化されたポイントを押し出すことが何よりも重要なので、他社に真似できないポイントを前面に押し出していきましょう。
③多くの人を動かすことができる、強力な提案であること
USPは独自性を顧客目線で伝えるだけでなく、その短い文章で多くの人の心を動かさなければなりません。
例えば、M&Msチョコレートの「口でとろけて手にとけない」は、温かい手の中にあると溶けてしまうチョコレートの概念を大きく打ち壊したUSPとして、当時アメリカでは広く浸透しました。
また、ライザップのUSPである「結果にコミットする」は成功が難しいダイエットに対し、あえて「コミット(結果を約束する)」という強力な言葉を使うことで、顧客の不安感を払拭しています。
このように、USPは単に独自性を押し出すだけでなく、どのような言葉・言い回しをすると顧客の心に響くかを考えることも大切です。
どんなものがUSPになりうる?
USPを作る際、どのような面をピックアップして文章化すればUSPとして成り立つのでしょうか。
ここでは、USPとしてなりうるものと、USPとはいえないものについて、解説していきます。
USPになりうるもの
USPになりうるものとしては、以下のものが挙げられます。
- 自社独自のサービス
- 自社独自の機能
- 専門性が高いコンテンツの提供
- 品質の高いコンテンツの提供
- コストパフォーマンスに優れた価格
- 業界最安値をほこる価格
- 他社にはないサポート
- 納期までのスピード
何度も解説しているとおり、USPを作る際は、ただ自社のセールスポイントを伝えるだけでなく、顧客に「ここでなくちゃだめだ」と思わせることが大切です。
例えば、ダイソンの場合「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」というUSPにすることで、吸引力の強さをアピールする他社に対し、新品の状態を長くキープできる品質の高さをアピールしています。
また、ニトリの「お、ねだん以上。」というUSPは、価格の安さだけでなく品質の良さもアピールすることで、「高品質な雑貨や家具を安く手に入れたい」といった顧客の心理を上手く掴んでいます。
USPとはいえないもの
一方、USPとはいえないものには、以下のものがあります。
- 自社サービスや商品の紹介
- 競合でも取り入れているポイント
- どこにでもあるサービス・特徴
- キャッチコピー
USPは、自社の独自性を伝えることが大切です。そのため、セキュリティソフトの販売会社が「ウィルス対策完備」や「詐欺メールブロックします」などのように、競合でも取り入れている当たり前のポイントをアピールしてもUSPにはなりません。
また、カルビーの「やめられない、とまらない」や、キユーピーの「愛は食卓にある」は顧客の興味を向かせる目的で作られたキャッチコピーなので、こちらもUSPとはいえません。
USPは、他社と差別化できるポイントやメリットを顧客に伝えることが目的なので、自社サービスの説明やキャッチコピーなどは使わないよう注意しましょう。
USPを作る流れ
USPを作る流れは、以下のとおりです。
ペルソナを設定する
ペルソナとは、貴社の商品やサービスを利用するユーザーを具体的に想像した仮想の人物像です。
USPは不特定多数の人向けではなく、1人の人物に向けて考えたほうがユーザーの心をつかむ文章を作りやすくなります。また、ペルソナを設定しておけば、複数人でUSPを考える際も認識のズレが生まれにくくなるため、効率よくUSPを作ることが可能です。
ただし、ペルソナは「20代男性」といったように大まかな内容で設定では情報が足りません。「社会人7年目の20代独身男性、趣味はサッカー観戦、彼女と2年付き合っており、来年の結婚式に向けて準備中」といったように、具体的な内容で設定しましょう。そうすることで、より顧客の心に刺さるUSPを作成できます。
自社の商品・サービスの強みを洗い出す
ペルソナ設定が完了したら、自社の商品やサービスの強みをピックアップしましょう。
ただし、ペルソナ(顧客)目線で見たときに優位性や独自性のないものはUSPとして利用できません。そのためUSPを作る際は、ペルソナ(顧客)に「このサービスはここで買わないと(利用しないと)だめだな」と思わせるような、オリジナリティのある強みをピックアップしてください。
どのような強みがUSPとなるのかわからない場合は、本記事内で解説した『USPの基準』や『どんなものがUSPになりうる?』を参考にピックアップしてみましょう。
このとき、競合他社と差別化できるポイントが見つからない場合は、商品やサービスごと見直す必要があります。
競合となる商品・サービスとの差別化要素を言語化する
競合他社よりもオリジナリティのある強みをピックアップできたら、それぞれの強みを言語化し、USPを作っていきます。
USPはキャッチコピーと異なるため、文章を読んだだけで貴社の強みがペルソナ(顧客)に伝わる内容にしなくてはなりません。そのため、USPを作る際はキャッチーな言葉を選ぶよりも、競合となる商品やサービスとの差別化要素が伝わりやすい言葉を選びましょう。
記事後半の「著名企業によるUSPの事例」では、著名企業のUSPを4つご紹介していますので、USPを言語化する際は、ぜひ参考にしてください。
顧客に選ばれる、魅力的なUSPを作るためのポイント
顧客に選ばれる魅力的なUSPを作るためには、以下6つのポイントを抑えておく必要があります。
ひとつずつ解説していきましょう。
ペルソナを設定し、消費者目線で作る
商品やサービスの強みというと、まず技術や機能性の高さが思い浮かぶと思いますが、ペルソナにとってそれらが魅力や価値になるとは限りません。顧客に選ばれるUSPを作る際は、消費者としてペルソナを設定し、そのペルソナが魅力を感じるような強みを言語化することが大切です。
例えば化粧品を売りたい場合、ペルソナが「女子高校生、休日は近所の商業施設やファストフード店で友達と過ごすことが好き」であれば、コスパの良さやパッケージの可愛さなどを重視したUSPのほうが刺さります。一方、「20代女性独身OL、趣味はカフェ巡りや写真」であれば、品質の高さや口コミの良さなどを重視したUSPにしたほうが刺さるでしょう。
このように、USPは設定するペルソナによって何を強みとしていくかが大きく変わります。必ずしも技術力の高さや機能性の高さなどがUSPになるとは限りませんので、注意をしてください。
独自性・専門性を活かせる市場を見つける
そもそも、サービスや商品が独自性・専門性を活かせる市場で提供されていなければ、顧客にとって魅力的なUSPを作ることはできません。そのため、魅力的なUSPを作りたいのであれば、競合他社が応えられていない顧客の悩みに応えられる強みを持ちましょう。
例えば、Appleが初代iPodを発売した際のUSPは「1,000曲をポケットに」でした。音楽を聴くといえば、何枚ものCDやMDと共に大きなプレイヤーを持ち歩くのが主流だった当時、ポケットに入るほど小さい端末内に1,000曲も入るという点は、競合の中でも強い独自性をアピールできています。
このように、魅力的なUSPを作るためには、独自性・専門性の高い商品やサービスを提供することが前提であるといえるでしょう。
無理に1つに絞ろうとしない
USPに入れ込む強みは、1つに絞る必要はありません。競合に勝る強みが複数ある場合は、強みを掛け合わせ、さらなる強みにすることも可能です。
ただし、あまり多くの強みを入れすぎるとペルソナ設定から外れてしまう可能性もあるため、あくまでも「ペルソナに刺さる言葉」という軸がブレないように注意してください。
万人受けを狙わない
何度も申し上げているとおり、USPは万人受けする言葉ではなく、あらかじめ設定したペルソナの心に刺さる言葉で作ることが大切です。
万人受けするUSPだと、せっかくの強みも広く浅くしか刺さりません。せっかくUSPを作るのであれば、特定の人に深く刺さる言葉で作りましょう。
新商品・新サービスの場合はできるだけ早く作る
新商品や新サービスを打ち出す際は、競合他社に先を越されないよう、できるだけ早くUSPを作りましょう。
他社より優れている強みがあったとしても、USPを出すのが遅れてしまうと強みが上手く顧客に伝わりません。この場合、顧客は他社のUSPを見て別の商品やサービスを選んでしまう可能性があるので、USPを作る際はスピード感も重要です。
フレームワークを活用する
顧客にとって魅力のあるUSPを作るのであれば、フレームワークを活用するのもおすすめです。フレームワークを活用すれば、自社商品やサービスの強みを自社目線・顧客目線の両方から分析できるため、より顧客の心に刺さるUSPを作りやすくなります。
ここではマーケティング時におすすめのフレームワークとして、「4P分析」と「4C分析」をご紹介します。
4P分析
4P分析とは、自社目線に立ち、以下4つの視点から分析するフレームワークです。
- Product(製品)
どのような製品・サービスを提供しているのか - Price(価格)
販売価格は競合と比較して妥当か - Place(場所)
どこで販売し、どのような流通経路を確保するのか - Promotion(販促活動)
どのような販促活動を行えば顧客に認知してもらえるか
これら4つの視点から自社商品やサービスの強みを分析することで、他社にない強みを明確にできます。
4C分析
4C分析とは、顧客目線に立ち、以下4つの視点から顧客の心理状態を分析するフレームワークです。
- Customer Value(顧客価値)
顧客が商品を買ったりサービスを利用したりすることで得られる利益や感情 - Cost(顧客にとっての経費)
商品やサービスにおいて顧客が妥当だと判断する価格 - Convenience(利便性)
顧客が商品やサービスを入手・利用しやすいか - Communication(コミュニケーション)
商品購入またはサービス利用後に、アフターサービスなどで顧客とコミュニケーションを取る手段はあるか
USPを作る際は4C分析を行い、顧客の心情や自社商品・サービスに対する印象などを分析しましょう。
著名企業によるUSPの事例
ここまで、USPの作り方や作るうえで抑えておきたいポイントなどを解説してきましたが、実際に多くの顧客に刺さるUSPとはどのような文章なのか、イマイチ想像できない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この項目では著名企業が掲げているUSPを4つご紹介します。いずれのUSPも、見たり聞いたりしたことのある文章ばかりだと思いますので、ぜひUSP作りの参考にしてください。
ドミノ・ピザ
ドミノ・ピザのUSPは、以下です。
こちらのUSPを打ち出した当初、ほかのピザ屋でも30分以内にピザを届けることは可能でした。しかし、ドミノ・ピザ以外のピザ屋ではおいしさを強みとして押しているケースが多かったため、あえてスピーディーさを強みに選んだドミノ・ピザのUSPは、多くのユーザーが注目しました。
また、30分以内に届かなかった場合はピザ料金が無料になるという前代未聞のUSPも、「熱々のピザを早く食べたい!」といったユーザーの心理を上手く捉えています。
ダイソン
ダイソンのUSPは、以下です。
こちらのUSPを打ち出した当初、掃除機といえば吸引力の強さをアピールする商品が大半でした。しかし、ダイソンは「どんなに吸引力が強い掃除機でも、使い続けると吸引力は落ちてしまう」といったデメリットに目を付け、「吸引力が変わらない」と、デメリットを払拭する新しいUSPを作成しました。
また、「ただひとつの掃除機」と文末に付けることで、購入後も強い吸引力を維持できるのはダイソンだけという特別感を演出した点も、魅力的なポイントです。
ニトリ
ニトリのUSPは、以下です。
家具といえば高額商品という認識が当たり前だった当時、お手頃価格で質の良い家具を購入できるといった他社にないメリットを、「お値段以上」と「お!値段以上!」と2つの言葉をかけて上手く伝えています。
ニトリのUSPは「家具を買いたいけれど価格は抑えたい」といった顧客のニーズを捉えただけでなく、CMでは「お、ねだん以上、ニトリ」と最後に社名をプラスしたことで、コスパの良い家具屋=ニトリという知名度の確立も叶えました。
QBハウス
QBハウスのUSPは、以下です。
一般的に、美容院や理容院では「ゆったりした雰囲気」を大切にしていますが、QBハウスでは真反対の「早さ」を強みにしています。それにより、「伸びた部分だけカットしてほしい」「長時間じっとできない小さな子どものヘアカットをお願いしたい」など、スピーディーさを重視したいユーザーからの注目を集めました。
QBハウスは美容院や理容院で当たり前に行われるシャンプーやブローを提供せず、ヘアカットのみを提供するため、1人あたりの施術時間が10分あたりで収まる点が、業界にない大きな強みです。
まとめ
今回は、USPの基本内容だけでなく、USPの作り方やUSPを魅力的な内容にするポイントなどを解説してきました。
魅力的なUSPを作成すると、宣伝にかかる費用や労力を削減できるだけでなく、貴社商品やサービスに帯する顧客認知度も自然とアップするため、マーケティングを行う際はぜひ作成しておきましょう。
ただし、USPはあらかじめ設定したペルソナに対し、顧客目線から見た独自のメリットや強みを言語化してわかりやすく伝えることが重要です。自社の特徴をただ伝えるだけだったり、ペルソナのニーズにそぐわない強みを打ち出したりしても効果はありませんので、USPの作り方にお悩みの方は、本記事を参考に魅力的なUSPを作成してみてください。