人事制度は採用や労働管理など従業員に対する人事的な施策を行う制度です。人事制度の等級制度や評価制度、報酬制度は中心的な制度になります。
評価制度の相対評価と絶対評価は一長一短があり、どちらを導入すべきか意見が分かれる場合があります。相対評価と絶対評価の長所と短所を理解して、自社にはどちらが適しているかを判断することが必要です。
それぞれの会社の実情に合った評価制度を導入することが人事政策を実現するためには重要になります。
人事制度
人事制度は広い意味では従業員の処遇を中心にした人事上の施策を行う仕組みを指し、公正公平に行われることが求められます。人事制度の内容は募集や採用、労務管理、賃金など報酬、人事異動や昇進など等級・評価、教育や退職、出張や福利厚生などになります。
狭い意味の人事制度は、等級制度や評価制度、報酬制度を指します。等級制度は従業員の能力のレベルや職務の内容を基準に資格や職階の等級を定めることです。等級制度によって従業員のポジションが明らかになり評価や処遇が行われます。
評価制度は従業員の職務能力や業務の成果を評価する仕組みで、人事考課や査定とも呼ばれる制度です。評価制度で能力や成果が評価された結果に基づいて、一人一人の従業員の等級の昇格や降格が決まります。
報酬制度は、評価制度で評価された等級や評価の結果に基づいて従業員の報酬を決める制度です。報酬制度で決めるのは月例給与や賞与、退職金などで、報酬制度によって従業員の処遇が確定することになります。
相対評価
相対評価は複数を相対的に評価するやり方で、2000年頃までは日本の多くの学校で相対評価を標準にしていました。相対評価は、集団の数が多くなれば成績の分布が正規分布に近づくという統計学の理論を基本にしています。
しかし相対評価の5段階評定で生徒を成績順に評価する場合は、5から1までの生徒が一定の割合で振り分けられることになり、実際の学力試験では成績の分布が必ずしも正規分布にならない例も多いことが判明しました。
そのために2002年のゆとり教育から絶対評価が導入されています。相対評価の方法は教師が偏った評定をすることを防止する面がある一方、成績上位者を固定してしまう側面や学校間のレベルの格差を生む側面なども危惧されました。
会社の人事考課で相対評価を使用する場合は評価基準を事前に定めず一定のグループでメンバーの比較をして順位をつける方法と、グループの平均の成績を評価基準として算出してグループの業績への貢献度を勘案して評価する方法があります。
絶対評価
絶対評価は特定の基準に基づいて絶対的に評価する方法で、到達度評価と認定評価があります。到達度評価は設定した目標にどこまで到達したかで評価するもので、日本の公立学校では到達度評価による観点別学習状況評価が一般的です。
認定評価は教師が考える非公開の基準で評価するもので、試験や授業時の態度などが基準の要素になります。認定評価は茶道や華道などの判定時に使用されていますが、評価基準が分からないので教師への不信感などが指摘されています。
企業の人事評価は、透明性などの理由で絶対評価を取り入れるべきとの考えが主流になりつつあります。人事評価が信用されるには実施の基準や結果の明確化が必要ですが、絶対評価は基準や結果が明確であると考えられます。
また評価制度は従業員が適正に評価されていると感じることが大切ですが、絶対評価は従業員が適正だと感じる基準や結果が明確です。絶対評価は企業など組織で取り入れられており学校でも絶対評価を取り入れる傾向にあります。
絶対評価と相対評価
企業の人事で行う評価は絶対評価を取り入れることが主流になっています。その理由は絶対評価に透明性がありどのような基準で評価されているのかが分かり結果も明らかになるので、人事評価に対する信用が上がっていることです。
絶対評価は導入することで社員のモチベーションが高くなることが期待できます。具体的な方向性を示すことで業務に集中することができモチベーションが向上します。結果として組織全体の力が最大限発揮されることが期待できます。
相対評価は他者との比較で評価しますので、集団の中で優劣を決めて順位をつけることができます。自分が設定した目標を達成しても他の人がそれ以上の結果を出せば評価が下がり、他の人の結果が悪ければ評価が上がります。
相対評価は評価する側が判断しやすい長所がありますが、評価される側が分かりにくい短所があります。努力しても評価されない場合がある反面、努力しなくても評価される時があるのでモチベーションが上がらないことが考えられます。
人事制度の評価を効果的に行うには
人事制度は企業を経営する基本になります。採用や労務管理など会社を運営していく上で欠かせない事項が制度として定められています。人事制度でも等級制度や評価制度、報酬制度は中心となります。
中でも評価制度は人を活用する点で重要です。評価制度は相対評価と絶対評価があり、それぞれの良い点を取り入れた運用が必要です。学校教育では相対評価から絶対評価に変わっていますが、企業ではそれぞれの長所を取り入れた活用が効果的だと考えられます。